医療通訳で知っておくべき基本知識
みなさんこんにちは、通訳者のホーティバンです。本日は「医療通訳で知っておくべき基本知識」というテーマでお話していきたいと思います。
概要
皆さんは、通訳者が重視すべき最も大切なポイントは何かご存知でしょうか?
もしかしたら、日本語能力の高さや通訳の素早さ・正確さだと思うかもしれません。
もちろん、それらのスキルは大切ですが、それ以前に、通訳者が知っておくべき基本的な知識が存在します。
一つ目は通訳方式、二つ目は通訳で使う人称。
本日は、これら二つのポイントがなぜ通訳者にとって大切なのかについて解説していきたいと思います。
医療通訳で使われる通訳方式について
通訳には、学会や国際会議など、状況や場面に応じて様々な通訳方式が存在しています。代表的な通訳方式は次の3つです。
・同時通訳
・逐次通訳
・ウィスパリング
上記3つの通訳方式のうち、医療通訳で適しているのは逐次通訳になります。
逐次通訳とは、一般的に次のような通訳方式のことを言います。
発言者が数文を話したあとに一旦話すことをやめ、その間に通訳者が通訳する。 伝え終わるとまた発言者が数文話してストップし、通訳者が通訳を行い…という工程を繰り返していく通訳方式
逐次通訳は発言者と通訳者が順々に話すため、2倍の時間がかかってしまいますが、1つ1つ正確に通訳できるというメリットがあります。
医療では、お医者さんが話した些細な情報であっても診断に必要な情報である可能性があり、そのため「逐次通訳」が適しています。
もちろん、場合によって同時通訳やウィスパリングが適していることもありますよ!
通訳で使われる人称について
通訳者が発話者の言った言葉を訳す時、人称は何を使えばよいでしょう?
例えば発話者が「私は昨日から嘔吐が続いています」と話した場合、正しい通訳は次の二つのうちどちらになるでしょう?
①私は昨日から嘔吐が続いています
②A さんは「私は昨日から嘔吐が続いています」と言っています。
はい、いかがでしょうか?日本語としては、①でも②でも意味が通じますよね。でも、通訳では、使う人称というのが基本的には決められています。
正解は①です。
通訳者は、基本的に三人称ではなく一人称で話します。
一般に、通訳というのは発言している人のいったとおり、そのまま訳すので、一人称を使います。
たとえば、Aさんが「私は昨日から嘔吐が続いています」といえば、そのまま、「私は昨日から嘔吐が続いていますです」と訳します。
「Aさんが『私は昨日から嘔吐が続いています』といっています」という風に、通訳者が第三者の立場にたって、「Aさんが」という部分と「といっています」という部分をつけ足して、三人称で訳すことはありません。
なぜかと言うと、理由は二つあります。
①簡潔なコミュニケーションをするため。
②医者と患者の直接のコミュニケーションを促すため
まず一つ目です。
先程の例でも分かる通り、三人称にするためには、「Aさんが」や「といっています」など、発話者の発言に付け足すフレーズがどうしても出てしまいます。これが会話の間ずっと続くと、どうしてもコミュニケーションが長くなってしまうんですね。一人称を使えば、この時間を可能な限り短くすることができます。
次に二つ目です。
医療行為は本来、患者と医師・医療従事者のあいだの直接的なコミュニケーションにもとづくものです。
言語の壁によって、この直接的コミュニケーションがなり立ちづらい状況のため、それをサポートするのが医療通訳者の役割です。そのため、医療通訳者は、可能な限り患者と医師・医療従事者のあいだで直接的なコミュニケーションが成立するように力を尽くさなければなりません。そのためには、一人称の通訳が最良の選択肢になるというわけです。
さいごに
今回も最後までご覧いただき本当にありがとうございます。
本日は医療通訳で使われる通訳方式についてや、通訳で使う人称について解説をしました。
通訳をする時、発話者間のコミュニケーションが円滑に進むよう、通訳者は色々と気をつけなければいけないことがあります。今回は、その中の一つについて解説をしてみました。
今後も、通訳についての豆知識などについて発信していきたいと思います。
それではまた次の記事でお会いしましょう。
バンでした。